他人を傷つけた損害賠償の扱い
個人再生では、一般の総債務の2割を分割弁済すれば、残りの8割は免責されるという制度になります。ただ、ここで注意しなければならないのは、債権の中に一般債権に当てはまらない債権があるときです。
個人再生で減免されない債権では、申立人が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権が挙げられますが、悪意で加えた不法行為でない損害賠償請求権でも、場合によっては減免されないことがあるのです。
個人再生では、申立人が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権は、減免しないとしています。
そのため、わざとやったことではない場合でも、そこに重大な過失があったときには、その損害賠償請求権は減免されないということです。
具体的には、飲酒運転や悪質なスピード違反で交通事故を起こしてしまい、それによって相手に死なせてしまうか、または大怪我を負わせてしまったケースが考えられます。
飲酒運転やスピード違反というのは、悪意を持って他人の生命や身体を害するというものではなく、結果的に他人の生命や身体を害することになってしまうものだと思います。
しかし、飲酒運転やスピード違反は、それによってどういった交通事故が引き起こされるのかを容易に推測することができ、そこには重大な過失、すなわち落ち度があったと言えるのです。
ただ、これは逆に言えば、過失があっても軽い場合や、重大な過失があってもそれが物的損害だったときには、個人再生で減免されることを意味しています。
そう考えると、そうした交通事故の被害者には、何ともやりきれない制度だと思います。