給与所得者等再生は利用しにくい
小規模個人再生には、再生債権者が再生計画案に反対することで、その再生手続を廃止にすることができる制度があります。
消費者金融からの借り入れによって急増した多重債務者を救済するために、民事再生法では個人向けに改正されたのが個人再生の始まりです。
しかし、消費者金融業者が個人再生に反対することが考えられ、債権者の反対によって再生手続が廃止になるのでは全く意味がありません。
そこで、再生債権者の反対で再生手続が廃止にならない給与所得者等再生が登場したのです。
政府からすれば、消費者金融で急増した多重債務者の救済としては、この給与所得者等再生が利用されるだろうという思惑だったと思います。
ところが、ほとんどの消費者金融業者は個人再生手続きで反対を申し出ることはなく、給与所得者等再生は、実際には小規模個人再生よりも利用しにくい制度となっています。
給与所得者等再生が小規模個人再生よりも利用しにくい原因は、必要弁済額が可処分所得の2年分を上回ることと定められているからだと思います。
可処分所得とは、1年間の収入から税金や社会保険料、政令で定める生活費などを差し引いた金額になります。
政令で定める生活費とは生活保護の生活費が基準になりますので、住宅ローンや家賃などの住宅費が高くても、生活費として計上できる金額は変わらず、その場合にはとても不利になってしまいます。
収入の低い人は可処分所得がマイナスになることもありますし、逆に収入の高い人は可処分所得が高額になってしまうのです。
可処分所得の本来の意味は、余裕のあるお金もしくは生活に余分なお金ということですが、実際の運用では家計ごとに調整して算出するわけではありませんので、有利不利が生まれてしまうのです。
そのため、給与所得者等再生の利用には申立人の生活スタイルで有利不利が別れ、非常に利用しにくい制度になっているのです。