昔は和解不成立が多かった?
特定調停で和解が成立しないということは、今の時代ではほとんどありませんが、昔は結構ありました。
特定調停が失敗に終われば、債務者は個人再生や自己破産に移行するだけなので、債権者としては特定調停での和解を拒む理由は見当たらないと思います。
しかし、個人再生がまだなかった時代では、今とは随分と事情が違ってきます。
住宅ローンを抱えている債務者、ギャンブルや浪費で借金を作ってしまった債務者、生命保険募集人や宅地建物取引業者の資格で仕事をしている債務者などは、基本的に自己破産をすることができません。
今では個人再生という制度がありますので、自己破産をしなくても個人再生をして債務整理をすれば済む話ですが、個人再生がない昔では、法律的に解決しようと思えば特定調停しかありませんでした。
今は破産が嫌な債務者は個人再生を利用すれば良いので、特定調停で失敗しても後がなくなることはありません。
昔は特定調停が失敗すれば、自己破産をできない債務者にとっては後がありませんでした。債権者からすれば、特定調停で無理に和解しなくても、ゆっくりと時間をかけて回収をすれば良いわけなのです。
また、特定調停を申立てることができるということは、その債務者には毎月の収入があることになります。
今は自己破産の申立てで強制執行が中断されますが、昔は自己破産を申立ててから4、5ヶ月後になる免責の確定日までは、強制執行での債権回収が可能でした。
そのため、特定調停で和解が不成立になって自己破産をされても、債権者には給与の差押という強制執行で債権を回収することができたのです。
昔であれば、債権者は特定調停で無理に和解する必要はなかったのです。特定調停で和解不成立が多かったのは、必然だったのかもしれません。