特定調停の具体例2
ここでは、特定調停の1例を挙げることで、より具体的にこの制度について説明したいと思います。
Bさん男性、妻と子供あり、会社勤務、月収は手取りで25万円、ボーナスは年夏と冬に20万円、妻のパート代は月5万円、借入れ件数10件、約定での債務額は400万円、現在の返済額は月15万円。
Bさんは生活費として家に月20万円を入れなければいけません。残った5万円はすべて借金の返済に充てられますが、それでも毎月10万円足りない状態です。
返済で足りない分はボーナスや借金を繰り返すことでまかなってきましたが、最近では消費者金融の審査も通らなくなり、このままでは破綻してしまうということで、特定調停をすることにしました。
特定調停を申立てると、利息制限法に引き直した債務総額が380万円だということがわかりました。
Bさんはお金を借り初めてまだ半年しか経っていません。そのため、利息制限法に引き直しても約定との差額が少なく、ほとんど借金が減りませんでした。
これまでと同じ5万円という返済原資では、380万円を返済するのに76回払いとなり、これは特定調停で目安とされている3年以内の分割弁済を大きくオーバーすることになります。
これでは和解が成立する可能性が低いということで、夏と冬のボーナスの総額40万円のうち36万円を返済原資に組み込み、月8万円の返済原資を確保することにしました。
月8万円の返済原資で380万円の借金になりますので、47回から48回払いになります。
これでも3年以内の分割弁済という目安をクリアーすることはできませんが、4年払いなら十分交渉は可能という調停委員の言葉を信じることにします。
債権者との和解交渉では、10件のうち7件はスムーズに和解が成立しましたが、3件については頭金でもあればということでした。
特定調停を申立ててからすでに3ヶ月返済をしていませんので、Bさんは15万円を持っていました。その15万円を頭金として交渉し、これで無事すべての債権者との和解が成立しました。
今回のケースではボーナスがありましたが、ボーナスがない場合には、家族に協力してもらって生活費を切り詰めたり、アルバイトをして収入面を増やしたりするなど、別の方法で返済原資を増やさなくてはいけません。
また、特定調停では80回払いで和解したというケースもありますので、返済原資が少なくても諦めることはありません。