社員が延滞したと請求されたら
債務者が延滞したとき、場合によっては貸金業者が債務者の勤める会社に泣きついてくることがあります。
特に、債務者本人が突然蒸発してしまったときには、貸金業者としては困ったものです。
そこで、債務者本人に支払われるはずの給料や退職金が未払いになっているのなら、それをこちらに回してほしいと、債務者の勤務先にお願いしてくる場合があります。
債務者の勤務先からすれば、このままずっと未払い金を置いておいくのは負担になります。
相手が信用のできる貸金業者なら、未払い金を渡してしまおうと考えることもあるかもしれません。
しかし、債務者の勤務先は貸金業者には絶対にお金を渡さないようにしなければなりません。
これは法律で決められていることで、労働基準法24条で「直接払いの原則」が定められているからです。
「直接払いの原則」とは、賃金は直接労働者本人に渡さなければならないというものです。
この規定は強行規定であり、たとえ労働者本人の承諾があっても厳守しなければなりません。
つまり、債務者である社員から会社に、自分の給料をどこどこの貸金業者に渡してほしいと言われても、会社はこれを拒否しなければならないということです。
私が消費者金融で督促を担当しているときには、別にこちらから頼んだわけではありませんでしたが、債務者の会社の社長が本人の給料を天引きして入金してくるということが数件ありました。
本人がどうしようもない奴で、全債権者に対して社長のほうで返済をコントロールするということです。
でも、これは実は違法であり、債務者本人が訴え出ると、社長は今まで債権者に支払った分を本人に支払わなくてはなりません。
ただ、強制執行による給与の差押については例外になります。