失われつつある与信技術
個人信用情報機関がなかったかつての消費者金融は、今では考えられないほどの素晴らしい与信技術を持っていたと思います。ちなみに、与信技術とは貸付審査の技術のことです。
かつての消費者金融業者は、融資申込者との対面審査において、その与信のノウハウや技術の開発に力を注いでいました。
現代の消費者金融はほとんどがコンピュータ審査になり、融資申込者が入力したデータを蓄積されたデータと照らし合わせて結果を出しています。
コンピュータ審査ではデータとなる数字や個人情報だけが審査の対象となり、その人となりや喋り方、態度など、人間観察によって得られるもっと深い情報を排除した審査になると思います。
かつての消費者金融では、こうした人間観察によって得られる情報をより重視して、貸付審査に反映させていたのです。
貸付審査は消費者金融の生命線ともなるもっとも重要な業務になり、この貸付審査をより良くしていくことが、当時の消費者金融にとっては最優先事項だったのです。
そのため、この頃の消費者金融の与信技術はとても高く、しっかりと人間を見て貸付をしていたのです。人間を見て貸付をすることは、その後の債権管理にも生きてきますので、健全な営業には欠かせないものだったのです。
コンピュータシステムを取り入れることによって、消費者金融業界は加速的に市場を拡大することができましたが、一方でこうした高い与信技術が失われつつあるのも現実です。
データに偏った貸付審査は、消費者金融業者の与信技術や消費者教育を後退させ、結果として多くの多重債務者を生むことになったと思います。