用途を偽られて実印を貸した
知人から就職の際の身元保証人を頼まれ、遠方のために実印と印鑑証明書を郵送で送ったとします。
しかし、その知人は就職の身元保証には実印と印鑑証明書を使わず、それらを借金のための保証人に悪用した場合、法律上はどうなるでしょうか?
実印と印鑑証明書を送ったのは就職のための身元保証人になるためです。借金の保証人になる意思はありませんでしたので、普通に考えれば契約は無効となるはずです。
契約とは、両者が合意のもとで行われるものであることが大前提であり、この場合には片方が合意できていないですよね。
でも、法律ではこのケースでは保証契約は認められ、保証人は金融機関に対して債務の保証をしなくてはいけないのです。
これは酷い話ですが、金融機関からすれば、知人が実印や印鑑証明書を預るほど信頼されており、保証契約をする代理権まで任されていると判断しても仕方がないとなるのです。
このことは「基本の代理権」と呼ばれ、実印や印鑑証明を他人に預ける行為は、相手にそれを使って契約を結ぶ権利を与えることになるのです。
この場合でしたら、就職のための身元保証人の契約書を送ってもらい、それに自分で署名捺印して送り返すという方法をとれば良かったのです。
印鑑証明ならまだしも、実印を他人に送るという行為は、相手がいかに信用できるとしても、何があるかわかりませんので、絶対にしないほうが良いでしょう。