準占有者への返済は有効
知人Aからお金を借りたとします。返済日にAの代理人だと主張するBが家にきて、その証拠を見せました。BはAの代理人になりますので、借りていたお金をBに渡します。
これは、たとえそのBがAの代理人ではない偽者だったとしても、準占有者への返済となり、その返済は有効となります。
貸金業者の話で考えればわかると思いますが、貸金業者からお金を借りるという行為は、その貸金業者の代表者からお金を借りるということになります。
でも、返済はその貸金業者の代表者に直接返済するということはないですよね。返済する相手は、その貸金業者の従業員になると思います。準占有者への返済とは、意味としてはこれと同じです。
民法では、相手方が債権者のような外観を有しており、かつ返済する者がその外観ゆえに、その者を弁済受領権限のある者だと信じるのも当然と言える場合、その弁済を有効なものとする、としています。
貸金業者の従業員は、集金時には必ず社員証を提示しなければいけません。これは、自分が弁済受領権限のある者だと証明するためです。
相手がそうした弁済受領権限のある者だということがわかったときには、その人に返済しても問題ないということです。
これは、その人が本当に弁済受領権限のある人かどうかは関係ありません。大事なことは、弁済受領権限のある人だと信じられる確固たるものがあったかどうかです。
知人Aから借金をしている人のところに現れた人が、Aの代わりに返済を受けにきたと言うだけでは、その人が本当にAから依頼された人かどうかわかりません。
そうした確証が何もないときには、安易に返済をしてしまうと後で痛い目を見ることがありますので、よく注意することが大切です。